Pour over & Fun
こんにちは、いつもありがとうございます。
タイトル、ひとつは「浅煎りの」もうひとつは「中煎りの抽出」。
ですが実際には、どちらの方法であっても浅煎り・中煎り、そして深煎りまで対応できて、それぞれ抽出方法の違いからお好みのテイストを狙っていただくことができます。
あえて浅煎り、中煎りって謳うのは、単に個人的なお勧めからです。
動画①は、お湯(溶媒)への反応がクイックな成分(溶質)を支配的にして、浅煎りなら酸やフレーバー、深煎りならビターネスのような「味の輪郭」をバッキバキに出す方法。液体は見た目・味ともすっきりとして明瞭になります。
動画②はそれに対し、全体をやさしく丸く整える方向。で、慣れてくると落としながら狙ってチューニングができるようになり、慣れていないと味がブレやすくなるリスクがあります。
ではそのチューニングの一例
動画②の落とし終わりの豆の姿(03:55くらい)と、下の画像の姿。
どちらも注湯の動作は同じようなことをしていますが、その水面の高さを変更することでこれだけの違いが出ます。
使ったグラインダーも、粉砕粒度もフィルターも一緒。豆の銘柄は違いますが、焙煎の仕上がりは揃えてます。
たくさんのお湯をドリッパーに置くとできる、「すりばち状の地形」
その深さが違いますよね。動画の方は深く、画像は浅い。
これは「すりばちの深さ」ではなくて、「地層の厚さ」として捉えるといいと思います。
溶媒が溶質の層の中を、滞留しないで、どれだけ反応を繰り返して通り抜けたか。これは熱交換器の考え方と似ていて、流体であるほど反応は強く、つまり「味の輪郭」がきっちり感じられるアウトプットにつながります。
逆に流体でなく滞留になると、反応がクイックでない溶質、答えを言ってしまうとボディ感に相当するものが支配的になっていって、TDS=溶液に対する溶質の含有量は高くなるものの味の明瞭度は落ちて、極端にすると薄くボケた印象になることもあります。
滞留による抽出に全振りするなら豆の粉砕粒度を細かく、抜けの遅いフィルターを使って、ドリッパー内を撹拌するようにぐるぐる回しながら多めのお湯を入れるといいと思います。抽出効率のいい深煎りで、低めの温度で出してあげるとまったりとしたバタリーな、それこそクラシックなコーヒーができあがります。
ただ豆や焙煎の品質に問題があると不快な味もシッカリ出てきてしまうので、ドリッパー水面付近の溶液がカップに落ちる前に引き上げたりと工夫が必要になることもあります。
さて、シエロの出荷先スタッフの皆さんや、豆を観察しながらのドリップが習慣になった方にはここまでの内容から
・ここで意図したチューニングのシンプルな操作点と判断基準
・動画①と②は無段階の調整でつながった同一の抽出方法であること
がお分かりいただけているかと思います。
特に出荷先の皆さん、もし腑に落ちなければこちらの研修内容に問題があるので、責任者の方を通してどんどん声を掛けてください。(そういえば6月に静岡東部で研修と一般向けワークショップやります)
例に挙げたこれらの方法で、たとえば抽出時間は300ccに5分を要することもあれば、360ccが3分を大きく下回ることもあります。何秒蒸らして、何cc注いで、何秒待って何cc追って、という方法論が環境条件や理由も定かではないまま伝承されては伝言ゲームを繰り返しているコーヒー界隈。ロジックを伴わない方法論で説明できることには限界があるし、本来のロジックに基づく判断ができれば説明自体が不要になります。
自分の頭で考えそのときの最適解と結果を迷うことなく結びつける、そのとても重要な情報は、いつも本でもネットでもどこかのオジサンの言葉でもなく、目の前のドリッパーの中にあります。
プロが持つ実力というのは再現性と幅広い操作性のことで、そのおおもとにあるのは自然で鋭い観察・認知力と対応力だとシエロは考えていて、必要な折にそのことを伝えてきました。
抽出クオリティとその安定度に関しては、出荷と技術監修をさせていただいた取引先においてのみ、シエロは責任を持たせていただいています。では、Webサイトでのコーヒー豆販売ではどうなるのか、というと
いきなりひっくり返しますが、「どう淹れてもおいしい」
これを狙っています。
最後にひっくり返してごめんなさい。以上です!Enjoy!!